認知バイアス

意志力は消耗するは嘘?自我消耗と認知資源の違い

意志力は鍛えられる

「意志力や自制心などの心の働きは消耗する有限な資源である。」

意志の力は筋肉のように使えば疲労(消耗)するし、回復もする。

これは1990年代の後半にアメリカの心理学者ロイ・バイマウスターの研究より導かれた答えです。

最近では雑誌や書籍、ブログなどでも「意志力は鍛えられる!」「意志力を高める!」などの特集が組まれています。

しかしこの「意志力や自制心は消耗する。」「意志力は鍛えられる。」と言った説に対しては近年否定的な見解も多く出てきています。

そもそも意志力とは?

そもそも意志力とはなんのことでしょうか?

意志力とは何かに集中したり、決断したり、または自身の欲求を抑えるのに使う力です。意志力のことは“ウィルパワー”とも言われています。

この意志力についてバイマウスターの研究では自身の欲求を抑えた際に実際に低下していく現象を見出しました。

バイマウスターの研究はこのようなものです。

最初の被験者に対して、チョコレートやクッキーなどの魅力的な甘いお菓子を見せあえて我慢をさせて、その後に絶対に完成しないパズルに取り組ませる。

その結果、我慢をした後にパズルを取り組んだ時と我慢せずに取り組んだ時とでは甘いお菓子の誘惑に我慢してからの作業の方が取り組める時間が短かった。

甘いお菓子の誘惑に抵抗(欲求に抵抗)したあとに複雑で高度な思考と集中が必要な作業をすると長時間取り組めなくなるのです。

このような研究結果から人の意志力は自分の欲求に抵抗する時に低下すると考えられています。

この意志力(ウィルパワー)が低下することを【自我消耗】と言います。

意志力が下がる時

バイマウスターの研究では“欲求を抑える(自制)”することで“集中力”と“思考力”が低下しましたがその他にはどのような時に意志力は下がるでしょうか?

以下にその代表的な例を6つを挙げました。

  1. ストレス(嫌いな人と付き合う。興味のないことを考えさせられる。好きでもない仕事を強要される。感情を我慢する。などのストレスを感じる作業全般。)
  2. マルチタスク(複数の作業を同時に行う。複数の目標を同時に持つ。)
  3. 長時間労働
  4. 集中した作業
  5. 選択と決断
  6. エネルギー切れ(血糖値の低下、脳の栄養のブドウ糖の不足)

スティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグがいつも同じ服を着ているのは「毎日の服を決めるという選択と決断による意志力の低下を防ぎ、本来集中すべき仕事にそのリソースを残す為」です。

またこの意志力で使えるリソースのことを【認知資源】と表現されます。

バイマウスターの研究では意志力と自制心の“消耗”にフォーカスをしているのに対して、認知資源は使える“リソース”を見ている点でことなります。

ですが、「有限である」「消耗する」「回復する」などの観点から共通する点も多いです。

意志力を回復する方法

意志力は有限なリソースですから消耗をしたままではいつか無くなり使えなくなってしまいますから意志力には回復をする方法も必要です。

意志力を回復させる主な方法が以下の4つです。

  1. 栄養摂取…脳の栄養であるブドウ糖が効果的。
  2. 十分に睡眠する…意志力は脳の働きなので睡眠で脳をしっかり休ませる必要があります。
  3. リラックスする…ストレスが意志力を低下させる大きな要因ですので、マッサージやストレッチ、軽い運動などでリラックスしてストレスを軽くします。
  4. 瞑想する…ストレスを低減するとともに集中力が高まります。
  5. 自分にご褒美をあげる…我慢するだけではなく、定期的に自分にご褒美をあげることで意志力だけでなくモチベーションも高まります。

どの回復方法にしても「あまり自分を無理させすぎない、我慢させすぎない」というとこがポイントですね。

意志力は鍛えられる?

意志力は筋肉と同じで鍛えられるものとして扱うこともありますが、僕が調べたところでは「鍛える方法=意志力を下げないようにする方法」であることがほとんどでした。

“小さな目標を達成していく”という意志力を鍛える方法もありましたが、これはどちらかというと“習慣化して意志力を使わないようにする方法”でしょう。

鍛える方法よりも「低下させない」「回復させる」をしっかり意識するのが大事です。

なので意志力を鍛えようとするよりも「私はこれをやり抜くんだ。」「これはやり抜く価値があるものだ。」と自分の力とその価値を信じ込みやっていくこと。

そしてその結果が出るまでやり通した時に「意志力が鍛えられた。」と人は感じるのではないでしょうか?

意志力は消耗しない?

さて、ここまで意志力について書いてきましたが、現在では意志力が消耗する(自我消耗)に対して懐疑的な意見が多数あります。

なぜならバウマイスターの研究と同様な研究をやっても「自我消耗をしている結果が得られないケースが多い」からです。

またバウマイスターの研究では被験者にレモネードを飲ませることで意志力の向上が見られましたが、「レモネードを少し飲んだだけではそんなに早く血流に乗って脳まで到達しない。」というのが現実的な見方のようです。

なので、このバウマイスターの研究はバウマイスターの信じ込みによるただのプラセボ(偽薬)効果だという意見もあります。

意志力が本当にしても嘘にしても。

このように最初の説や実験結果が広まった後にそれと対立する意見や研究結果が出てくるのは科学の世界では往々にしてあります。

大切なことは「自分はどちらの意見を採用したいか?」「自分はどちらの結果に実感が湧くか?」と自分の考えで採用する意見を決めていくことです。

そうしなければ科学だけでなく様々な情報に常に振り回されてしまい、自分自身の行動がブレていくだけでなく、自分の心が安定しなくなっていってしまいます。

そして何よりも「自分の内なる心の声」に耳を澄ますことです。

自分の内なる心の声に耳を澄ましていれば、疲労していれば疲労していることがわかります。エネルギーが不足していたら休息や栄養補給が必要だとわかります。
そして頑張り時には「ここが頑張り時だからもう一踏ん張りしなきゃな!」というのも自ずと分かってくるものです。

脳科学や心理学、そのほかの様々な学びを得るのはとても大切なことです。

ですが、その知識に溺れてしまうのではなく、【自分は何をしたいのか?】をはっきりとさせていることがそれ以上に人生にとって大切になります。

【自分は何をしたいのか?】その心の声の方向に向いていけば、日々のエネルギーも沸き、意志力の低下も防げる毎日になることでしょう。

僕がやっていること。

意志力が消耗しているか?に関わらずにやはり疲れていると集中できずに作業も捗らなくなってしまいます。

なので、「疲れたな。」と集中力が切れてきたら、少し運動をしたり、ちょっとだけ甘いものを食べたりと気分転換するようにしています。

特に仕事柄デスクワークが多いのでこまめに立ち上がってストレッチをするようにしています。

自我消耗…意志の力は筋肉のように使うと消耗する。